10-4. cDNAライブラリーの作製
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1) ライブラリー作製の要点
ベクターの選択
全長に近い二本鎖cDNAを合成し、それをベクターに組み入れる
1990年代まではファージベクターがほとんどで、プラスミドベクターの使用例は、ポリリンカー付加を利用する岡山-バーグ法などしかなかった
しかし最近では、エレクトロポレーション法で形質転換高率を高められれること、発現のためにDNAを微細に加工する必要がないこと、そしてライゲーションによらない方法(LIC法)も使えるようになるなど、プラスミドの使用が多い
mRNAに由来するcDNAライブラリーの最大の特徴はタンパク質発現ができる点にあるが、このようなことができるライブラリーを発現ライブラリーという
タンパク質全体の産生を目的にする場合は、ポリA鎖とキャップ構造の両方をもつmRNAからつくった全長cDNAが必要
細胞や組織の選択
cDNAライブラリー作製を通して目的クローンを得るためには、目的mRNAを発現している細胞や組織からRNAを抽出する必要がある
組織特異的な遺伝子、誘導される遺伝子、発生特異的遺伝子などでは、それぞれに適した細胞・組織からmRNAを調製する
2) 特異的クローン濃縮のためのサブトラクション
特異的に発現する遺伝子クローンを効果的に単離するためには、普遍的クローンを減らす工夫が必要
このための方策に、特異的クローンを含むライブラリーの中から普遍的なものを除くサブトラクション法(差分化法:subtraction)がある
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古典的方法(図左)
特異的細胞由来の一本鎖cDNAを合成し、それを普遍的細胞由来のmRNAとハイブリダイズさせ、その混合物を二本鎖核酸が優先的に結合するヒドロキシアパタイト(リン酸カルシウムのゲル)に吸着させ、素通り画分を得る
必要があれば操作を繰り返し、最後にそのcDNAでライブラリーを作製する
mRNAを特異的に沈殿させる方法(図右)
特異的細胞由来cDNAでプラスミドcDNAライブラリーを作製する
これを変性させ、普遍的細胞由来mRNAとハイブリダイズさせる
このときmRNAにはビオチンを結合させておく
そこにビオチンと結合するアビジンを反応させ、それを沈殿させて除き、特異的クローンを上清として得る
残ったライブラリーに同様の操作を施し、再度、普遍的クローン除去作業を行う
3) ディファレンシャルディスプレイ
ディファレンシャルディスプレイ(differential display)
2種類の細胞からリン32のRIを加えてcDNAを合成し、それらを並べてゲル電気泳動、オートラジオグラフィーする方法
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一方にあり、他方にないというバンドが特異的DNA
ゲルからcDNAを抽出して直接サブクローニングできる